まろやんの徒然猫草

草紙といえる程のものでも無い道端の猫草ですが、その時々の興味があることを書き連ねていきます。

この愛は、異端。 感想・考察(ネタバレ有り) 第9話

漫画『この愛は、異端。』感想・考察(ネタバレ有り) ~第9話~

※既読者向けの内容になりますので、未読の方は是非作品を先にご覧ください。

この愛は、異端。 2 (ヤングアニマルコミックス)

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第9話はサタンとセーレが日本にいるバアルを訪ねてくる話です。よしのにとっては気さくで気前のいいおじさんという印象のサタンですが、果たしてその実態は…。また、バアルの真の姿が初めて明らかになります。

 

 

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よしのとバアルが自宅で寛いでいると上司のサタンと後輩のセーレが訪ねてきます。けれど人見知りのよしのは挨拶もそこそこに、じっと覗き込むようなサタンの視線に本能的な恐怖を感じバアルの背後に隠れてしまいます。

自分の視線に恐怖を感じた獲物がもう一体の捕食者であるベリアルに身を寄せる姿を見て、サタンがベリアルに抱いていた疑惑が確信へと変わります。

 

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ワンルームの部屋が狭いとこき下ろしながら勉強机の椅子にどっかり腰掛ける遠慮の無いサタンに、よしのはさらに警戒心剥き出しで威嚇します。そんなよしのの言動が目に余ると本気のお叱りモードに入るバアル、彼らを尻目に机上のアルバムを開いたサタンは二人の7年間に渡る生活を目の当たりにします。

 

話の随所に出てくるアルバム写真と一言コメントですが、いつも二人の生活感が溢れていて本当に微笑ましいです。中学生よしのの誕生日には一緒にプレゼントを買いに行ったり、お弁当にはよしのの大好きなハンバーグを手作りしてあげたり。高校生よしのは勉強が苦手で、テストは一夜漬けの末36点と酷い結果。成人よしのにはお祝いとして200万もする着物を対価無しでプレゼントしています。

勉強が苦手でギリギリまで手を付けないのは、後々第16話でも描かれていますね。

それと女性の読者なら想像つくと思いますが、成人式の振袖はレンタルで20万前後、購入でも40万前後が平均的な価格帯(きもの販売店調べ)なので、200万の振袖は最高級のランクですね。総絞りとか作家ものの手書き友禅かな。高いと愚痴りながらもよしのの晴れ姿には最高級品を貢いでしまうバアルがいじらしいです。

あとよしのの酒癖が悪いことが判明しましたね、これはちょっと意外です。酒乱エピソードの写真はこちらのラフ画にも描かれています。

 

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サタンがアルバムを広げている背後で、バアルの厳しい教育的指導を受けたよしのが泣きじゃくりながら反省の言葉を述べます。第1話にもありましたが、恐ろしい悪魔姿のバアルに怒られてもその手をしっかり握っているよしのの姿から、どれだけバアルを信頼しているかが伺えます。

 

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泣きながら謝罪するよしのを見て食事に出かけようと提案するサタン、食事を必要としない悪魔にとって思いもよらない発言にバアルとセーレは驚きます。

よしののリクエストでうなぎ屋を訪れた一行ですが、よしのと同じように箸を進め更にお手洗いにまで行くサタンの姿に戸惑う部下2名。そこまで人間の生態に沿った振る舞いをするのは並大抵のことではないようですね。

ちなみに「バアルの分は私が貰う」と言っていたよしのですが、その言葉どおり二人前のうな重を完食した模様。隣でバアルが引いてます(笑)

 

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美味しいうな重をご馳走になりすっかりサタンへの印象を良くしたよしのに対して、再度バアルのお小言が始まります。食いしん坊のよしのは胃袋さえ掴めば簡単に相手を信用する、バアル自身も美味しい手料理でよしのの心を掴んできましたしね。

「あの人はこの世で最も悪い人なんだからすぐ信用しない!このバカ娘!」と大事なよしのが悪い人に騙されないよう保護者モード全開で叱りつけるバアル。一方そんなベリアルの発言を襖の陰から聞くサタン、疑惑から確信へとつながる証拠は着々と集まっていきます。

 

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食事を終えた道すがら、サタンがよしのに「悪魔ではなく天使姿のベリアルを見たことがあるか」と尋ねます。サタン曰く、普段のベリアルの悪魔姿は化けている仮の姿なのだと。思いもよらないバアルの秘密に興味津々なよしのに対し、自身が忌み嫌う天使姿の秘密をばらされ抗議しようとするバアルですが、サタンの有無を言わさぬ迫力に押し黙ります。

そしてサタンはよしのに好きなアクセサリーを買うようにと現金を握らせ、セーレと二人でお店に向かわせます。余計な人払いを済ませたサタンはベリアルに対しやっと本題を突きつけます。

 

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よしのに対するベリアルの7年間の言動を見て「情を移すな」と釘をさすサタン。人間だけでなく悪魔でさえも、置かれた環境によって心境が変化し感化されることがあるのだと。

ここでのサタンの言葉はあくまでバアルに対する牽制ですが、後々のストーリーにおいての重要な伏線にもなっています。神から愛を与えられなかった無価値な堕天使が、無力な人間の少女と接して芽生えた感情。最初は持たざる者でも一生そのままではないという所に救いを感じます。

 

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天界一美しい天使姿でよしのを誘惑し身体と魂を奪えと言われたバアルは、自分には自分のやり方があるとサタンにうそぶきます。けれどサタンから見たベリアルの振る舞いはまるで父親ごっこだと言い、追及の手を緩めません。

ここでシリアスなシーンの最中ですが、アルバムの文言を見ると「喜んで手作りケーキを全てたいらげてしまった」とあります。よしの…どんだけ食いしん坊なの…。

 

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悪魔らしからぬベリアルに業を煮やして説得するうち、つい普段人間にするような悪魔の誘惑を行ってしまうサタン。対してバアルはお得意の涼しい作り笑顔でにこっとサタンをあしらいます。まさに天使のような悪魔の笑顔ですね(マッチ感)

続けて「父親ごっこをした分の絶望はどれほど美味か」と下卑た笑みを浮かべ舌なめずりをするベリアルを見て、自分の心配は取り越し苦労だったと語るサタン。そこにちょうどよしの達がアクセサリーを買って帰ってきたためお開きとなりますが、サタンはベリアルに疑念の目を向けたまま…。

 

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魔王から貰ったお小遣いで天使と十字架モチーフのアクセサリーを買ってしまう無知なよしの。買い物中にサタンとバアルの間でどんな会話がなされたのかなど知らぬが仏です。ちなみにセーレも契約者エリザベスにお土産を買ったようですが、第14話でエリザベスがつけているネックレスはこの時購入したものなのかな?

 

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サタンから教えられたバアルの本当の姿が見たいと"お願い"するよしの。渋々天使の姿に戻るバアルですが、よしのの反応はサタンの想像と真逆で素気ないものでした。

余談ですがここで勉強が苦手なはずのよしのから「受胎告知」の単語が出るとは思いませんでした。よしのの専攻は日本画科だったと思うけど、さすがは美大生ですね。

初めて見る天使姿のバアルに「神話っぽい」「女顔」「まつげ長い」等、好き勝手な感想を述べたよしの。その発言に傷つき怒ったバアルから仕返しとして「世にもおぞましい物」を見せつけられます。

 

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おぞましい物を見せられてショックを受けるよしのですが、それよりも今日初めて見たはずの天使姿に何か引っかかる様子。その記憶を辿ろうと再度見せてとお願いしますが、全裸なら見せるとバアルにはぐらかされてしまいます。

ここのセリフの掛け合いや、うなぎ屋を出た後に「聞いてない!見たい!」「言ってない、見せない」と言い合うシーンなど、バアルとよしのの息の合った感じが読んでいて小気味良いです。良い作品はキャラクターに魂が宿ると言われますが、こういうキャラの立ったセリフの応酬を見るとその通りだなと思います。

 

以上、第9話での諸々ポイントでした。